首都圏マンション高根の花、細る需要 1月の契約率5割台
マンションの売れ行きが鈍っている。不動産経済研究所(東京・新宿)が16日発表した首都圏のマンション市場動向によると、1月の月間契約率は58.6%と好不調の目安とされる70%を大きく割り込んだ。建設費用の高止まりで販売価格が上昇し、購入を控える傾向が強まっているためだ。16日には日銀のマイナス金利政策が始まり、住宅ローン金利は低下する見通し。停滞する市場に慈雨となるか。
月間契約率は実際に売れた割合を示す。1月は前年同月比16.3ポイントの下落となり、2008年7月以来7年半ぶりに50%台まで落ち込んだ。「そもそも金利水準が低く、マイナス金利導入で市況が突然変わるということはない」。不動産経済研究所の松田忠司主任研究員はこう分析する。
背景にあるのは販売価格の高騰だ。1月の首都圏の1戸あたり平均価格は前年同月比25.0%増の5570万円。前年同月比での上昇は8カ月連続となり、過去最高だったバブル期の6100万円に近づいている。人件費などの建設費用が高止まりし、販売価格にも転嫁されているためだ。
販売価格の上昇と需要の減退を受け、不動産各社は新たに売り出す戸数を抑えている。首都圏の1月の発売戸数は前年同月比11.0%減の1494戸と5年ぶりの低水準だった。100戸以上となる大型物件の売り出しはなかった。近畿圏の発売戸数も31.6%減と状況は首都圏と同じだ。
ただ、1月は秋と春に仕掛ける大型商戦の端境期にあたり、もともと発売戸数は多くならない。にもかかわらず、契約率が50%台に落ち込んだ現状は相当に厳しい。
直近で契約率が50%台となった08年7月とは状況も異なる。当時も地価の上昇に伴い、1戸あたりの販売価格は5300万円台に高騰していた。ただ、各社はより割安にマンションを供給するため、地価の安い郊外での開発を積極的に手掛けることができた。現在は建設費用が高止まりし、郊外の物件でも販売価格が上昇傾向にある。
販売価格の引き下げが難しいなか、マイナス金利導入に歓迎ムードが広がる。16日には三井住友銀行が住宅ローン金利を下げ、ほかの銀行も追随する見通し。「今後もローン金利が下がれば、購入の後押しになる」(東急不動産)。「変動金利も下がれば、さらに販売面に良い効果が出る」(住友不動産)といった声が相次ぐ。
マイナス金利とともに各社が注視しているのは17年4月の消費増税に伴う駆け込み需要だ。マンションの場合、半年前の16年9月末までに購入契約を結べば、税率が10%となった後の引き渡しでも現行の8%が適用される。松田主任研究員は「5月の大型連休明けから始まるのでは」との見通しを示す。
建設費用の高止まりという厳しい環境に好転の兆しはない。各社はマイナス金利と消費増税がもたらす「官製」需要の盛り上がりに期待を寄せている。(岩本圭剛)
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