国債で損失の異常事態 円は急騰、株一時900円超安
9日の債券市場で、長期金利が史上初のマイナス圏に突入した。
住宅ローンや企業向け融資の目安で長期金利の代表的な指標である新発10年国債利回りは一時マイナス0・010%をつけた。世界経済の減速懸念や原油安から安全資産とされる国債に資金が集まり、利回りが急低下したためだ。東京外国為替市場の円相場も一時1ドル=114円台前半まで円高ドル安が進み、東京株式市場の日経平均株価も一時、下げ幅が900円を超えるなど波乱含みの展開となった。
長期金利がマイナスになったのはスイスに次いで2例目。最も安全な運用資産とされてきた国債だが、マイナスの利回りで購入して満期まで保有すれば損失が出る異常事態となった。年金や保険などの運用で一段の環境悪化が避けられない状況といえそうだ。
日銀は1月29日、マイナス金利の導入を決定し、今月16日からは金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0・1%の金利を課す。これを受けて市場で取引される国債利回りに低下圧力がかかり、5日時点で、満期までの残存期間が9年以下の国債は利回りがマイナスになっていた。
10年国債の利回りがマイナスになったことで、住宅ローンや企業向け融資の金利は一層の低下が見込まれる。ただ、すでに貸出金利が過去最低水準にあることから、今後の10年債利回りについて、市場関係者の間からは「マイナスが定着することはないだろう」(野村証券の松沢中氏)との見方も広がっている。
一方、9日の東京市場では、世界経済の先行きに対する懸念の高まりを背景に投資家がリスクを回避する姿勢を強めたことで、急激な円高と株安も進んだ。外国為替市場の円相場は一時1ドル=114円台前半と前日夕方に比べ3円程度上昇。麻生太郎財務相は9日の閣議後会見で、急速な円高ドル安の進行に関し「足元の市場で荒い動きが見られる。為替市場を注視したい」と警戒感を示した。
株式市場の日経平均株価も円高ドル安を嫌気して急反落し、一時1万6000円台に下落して、下げ幅は一時900円を超えた。午後1時現在は前日終値比841円19銭安の1万6163円11銭。
8日は中国の景気減速懸念や原油先物相場が節目の1バレル=30ドルを再び割り込んだことなどで投資家心理が冷え込み、欧米の金融市場が大きく荒れた。9日の東京市場はこうした流れを引き継ぎ、リスク資産である株式が大きく売られる一方、比較的安全な資産とされる円を買う動きが急加速。株式市場では幅広い銘柄が売られ全面安の展開となった。
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